タイトルにある「従業員をやる気にさせる7つのカギ」とは何か? 稲盛氏は次の7つを挙げている。
【従業員のモチベーションを高める要諦】(p37)
1. 従業員をパートナーとして迎え入れ
2. 彼らに心底惚れてもらい
3. 仕事の意義を説くこと
4. ビジョンを高く掲げ
5. 大義あるミッションを確立すること
6. フィロソフィを語り続けること
7. 経営者自らの心を高めること
稲盛氏は京セラ創業時の苦労をこう打ち明けている。
「実は、京セラを創業するにあたって私は、その創業の目的を『稲盛和夫の技術を世に問う』ためと位置づけていました。それなのに、一部の社員たちが『昇給をどうしてくれる』『ボーナスはどうしてくれる』と待遇保証を求めてきたのですから、私は愕然としました。」(p24)
『稲盛和夫の技術を世に問う』なんて理念を掲げて創業したとは、恐れながら笑ってしまう。ただよくよく考えた末、『従業員の生活を守ることが会社の目的である』と思い至り、京セラの経営理念がこのように掲げられたことには感心する。
不況に遭遇すると、『理想論を唱えているだけでは経営などできない』と言われるかもしれませんが、それでも理想は必要なのです。気高い理念を掲げて経営することが絶対に必要なのです。そういうものがなく、ご都合主義で気ままに考えて会社を経営していけば、どこかで必ずつまづきます。
あなたは良心の呵責で悩んでいらっしゃいます。それはそれでよいのです。悩むべきなのです。ただし、『卑怯な振る舞いはしていない』ということだけは自信を持ってください。100人をつらい目に遭わせてしまったということについては悩むべきですが、それは、残る人を守っていくためにやったことなのです。
理念として掲げてきたことを揺るがしてはなりません。ぜひ、いまのまま貫いてください。あなは、『私の掲げた理念は、いまでも正しいと思っています。今後も守っていこうと考えています』ということをお父さんにも言わなければなりませんし、従業員にもわかってくれるように話していくべきだと思います。」(p137・138)
「私は人生で最も大事なことは『利他の心』、すなわち、相手を思いやるやさしい心だと考えています。しかし、やさしい思いやりの心は、ただ単にやさしいのではなく、強さがいります。根底に強さを包み込む、大きなやさしさがなければ、人生の価値はないと思っています。」(p207)