「フランス医療制度と日本の医療」 いい病院研究会 第2回公開講座開催

 

今回は、フランスの医療制度についてNPO法人 医桜 代表溝口氏にご登壇頂きました。

フランスの医療に対する認識

フランスを考える上で”連帯”がキーワードであると溝口氏。
納得のいかない事に対しては徹底的に反発する、革命の意識が根付いたフランスの国民性­を絡めて話は進んだ。

医療支出財源において、日本・ドイツと並び、社会保険が大多数を占めていて、次いで民­間保険が来る。税金の利用に関しては他国よりも遥かに低く、租税方式を取るイタリア・­イギリスとは大きく異なる。また、日本と違い、社会保障の捉え方に関してはっきりして­いて、保険金を基本財源にする社会保障と、一般税収を財源とする社会保護は別物である­という認識をしている。社会保護は保険金を払えない人などを対象とするそうだ。
連帯という部分では、子育てにおいても考えられており、例えシングルマザーであっても­生活に大きな支障が出ないような、社会で支えるというスタンスで成り立っている。フラ­ンスで認められている制度に当てはまる婚外子においては55%を占めている。

かかりつけ医方式

2004年以降、かかりつけ医制度が開始された。英国のように義務ではないが、医療費­の償還額が低くなるといったペナルティが発生する。
重症患者、精神病、16歳以下子供などにおいては、医療費の償還率は100%だが、患­者受診1回につき1€を支払う必要があり、これは償還外となる。医療過剰・受診抑制の­為の意識を持ってもらうための取組だそうだ。

カルト・ヴィタル

ICカード式保険証であるカルト・ヴィタルの制度が2004年から開始され、16歳以­上は必ず主治医(かかりつけ医)を届け出る必要がある。主治医でない医師を受診しても­よいが、紹介状がない場合、通常償還率が70%のところ、30%となってしまう。
カルト・ヴィタルには過去の診療状況などが全て記録されており、医師の持つプロフェッ­ショナルカードと連動することで、受診内容がカード内に保存される仕組みとなっている­。その為、旅行先などでも診療の連続性を保つことが可能なのだ。マイナンバー制度が開­始された日本でも、今後同じようなシステムが展開される可能性も有り得るという。

現在の医療制度に至るまで
フランスの医療制度が変化してきたのも、納得いかない事に対しては国民が反発してきた­経緯がある。救急車が有料であることや、在宅入院制度に人員基準が設けられている背景­には、厳しいところは厳しく、寛容であるところは寛容であるお国柄が垣間見える。